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称呼の類似と判断されるパターンについて

商標が類似しているか類似していないかの判断(以下、「類否判断」)は、外観、称呼(読み)、観念(意味)が類似するかどうかを中心に行われます。つまり、称呼が類似しているということは、読み方が似ていることを意味します。

 

そのため、称呼の類否判断は、文字が含まれている商標について問題となることがほとんどです。称呼の類否判断は、いろいろな場面で行われますが、最も件数が多い商標登録出願の審査の類否判断について見ていきましょう。

目次

 

称呼の認定の仕方

審査において、称呼は、「商標に接する需要者が、取引上自然に認識する音をいう。」とされています。ひらがなやカタカナで表される商標は称呼が1つに決まりますので、問題となるのは漢字や英文字の場合です。

 

特許庁の審査基準では、「商標“竜田川”は、『タツタガワ』が取引上自然に認識される音であって、『リュウデンセン』のような不自然な音は生じない。」という例が挙げられています。

 

また、「色彩商標の場合は、色からも称呼が生じることがある。」と記載されています。赤い商標「○○」であれば、「○○」という称呼の他に「赤い○○」という称呼も生じうる、ということです。

称呼の一般的な類否判断について

審査における称呼の類否判断は、審査基準に基づいて行われます。判断要素はいくつかありますが、大きな要素は、異なる部分が商標の語頭にあるか又は中間若しくは語尾にあるかということ、及び、商標の文字数です。

 

異なる部分が商標の語頭にある場合は、称呼が非類似であると判断されやすくなります。例えば、同じ商品「化学品」を指定した商標“サンスター”と“モンスター”は印象が大きく異なり、実際にどちらも登録されています。一方、中間又は語尾が異なる場合は、類似と判断されることも多いです。例えば、“メルカリン”と“メルタリン”や、“シーシーエム”と“シーシーエヌ”は、互いに印象が似ていて称呼が類似していると判断されるでしょう。

 

商標の文字数が少ないと、異なる部分により、称呼が非類似と判断される可能性が高くなります。例えば、商標“タニタ”と“タビタ”は3文字しかないため1文字異なるだけで非類似と扱われています。逆に、文字数が多いと共通する文字の割合が大きくなるため、類似と判断される可能性が高くなります。

 

細かな部分を考えると、相違する音が長音、促音あるいは弱音などの場合は、相違点としての影響が小さくなり、称呼が類似と判断されやすくなります。例えば、審査基準では、“モガレーマン”と“モガレマン”、“コレクシット”と“コレクシト”及び“デントレックス”と“デントレック”は、それぞれ互いに類似していると記載されています。

称呼の特殊な類否判断について

よく争いが生じやすいのが結合商標についての称呼の類否判断です。類否判断の前提となる称呼の認定について、審査基準には、「結合商標は、商標の各構成部分の結合の強弱の程度を考慮し、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものと認められない場合には、その一部だけから称呼、観念が生じ得る。」と記載されています。

 

これは、結合が弱ければ、結合商標を切り離して、その一つ一つを他の商標との類否判断の対象とするということを示唆しています。

 

例えば、文字の大きさや書体が異なっていたり、大きく離れて記載されていたりした場合、あるいは、有名な商標が商標中に含まれていたりした場合です。

まとめ

類否判断は、審査においては審査基準に基づいて画一的に判断されることがほとんでです。称呼類似の判断も、審査基準において明確に記載されています。確認しておくことで、審査において、商標の称呼が類似と判断されて出願が拒絶されてしまう可能性を少なくすることができます。

 

称呼を含めた商標の類否判断について

称呼を含めた商標の類否判断は、特許庁での審査の場面及び審判の場面、並びに裁判所での訴訟の場面で行われます。実は商標の類否判断は、それらの各場面でかなり異なっています。

 

各場面における称呼を含めた商標の類否判断について見ていきましょう。

1. 類否判断の主体

審査の場面では審査官、審判の場面では審判官の合議体、そして訴訟の場面では裁判官の合議体が類否判断の主体となります。

 

審査官は、数多くの商標登録出願について審査を行う必要があり、審査に時間がかからないようにする必要もありますので、審査基準に基づいてなるべく画一的に類否判断を行います。

 

しかしながら、商標で防止しなければならないのは、商品や役務の出所の混同を生じるおそれがある登録商標を存在させないことです。

 

出所の混同とは、需要者が商品の出所を誤認して、求めていたものと異なる商品や役務を選択してしまうことで、そのようなことが起こると需要者の利益が損なわれるからです。

 

そのようなことを防止するために、一つの基準として、類似している登録商標が併存していると出所の混同を生じやすいと考えて、審査では類似商標に関する出願を拒絶するようにしているのです。

 

ただし、同じ特許庁内で行われる審判では審査基準に拘束されませんので、判例などを参考に、より具体的に判断するようになります。

 

さらに裁判では、原告・被告が提出した証拠資料などを精査し、本当に出所の混同が生じるおそれがあるか否かについて、取引の実情等も考慮して事案に応じた判断がなされます。

2. 類否判断の実例

(1) 審査における判断

最近、“プレミアムリッチネイル”という商標が商品「爪用せっけん類」等を指定して出願され、商品「せっけん類」等を指定した“プレミアムリッチ/PREMIUM RICH”という登録商標があることを理由に拒絶されました。

 

“プレミアムリッチネイル”の“ネイル”は「爪」という意味ですので、商品「爪用せっけん類」との関係で識別力(他の商品と区別するための目印としての強さ)はほとんどありません。

 

そのため、要部は“プレミアムリッチ”であり、登録商標“プレミアムリッチ/PREMIUM RICH”と称呼も観念も同じですので、登録できないと判断されたのです。

(2) 審判における判断

ところが、上記判断は、審判において“両者は出所の混同を生じないので、登録できる”として覆されたのです。“プレミアムリッチネイル”は文字の大きさも書体も同じであり、「一体不可分の一種の造語」だから、“プレミアムリッチ/PREMIUM RICH”とは称呼も観念も異なる、というのがその理由です。

 

このような理由で、審判において(審査基準に基づいて判断された)審査における判断が覆される事案が多くなっています。

(3) 裁判例

商標の類否判断は、最高裁判所でいくつか判例が出されています。裁判所では、審判で行われる判断の他に、取引の実情等も考慮されます。

 

例えば、“つつみのおひなっこや”事件では商標“つつみのおひなっこや”と“つつみ”の類似性が争われました。“つつみのおひなっこや”の出願人である上告人と“つつみ”の商標権者である被上告人は、仙台市堤町で古くから作られてきた堤人形の製造に携わっていました。

 

まず、知的財産高等裁判所では、「『おひなっこや』は東北地方の方言で「ひな人形屋」という意味があるため、この部分は指定商品である土人形等の品質を表しているに過ぎないから類否判断においては考慮されるべきではない。

そうすると、出願商標“つつみのおひなっこや”の要部は『つつみ』であり、登録商標“つつみ”と全体として類似しているから、“つつみのおひなっこや”は登録できない」と判断されました。

 

これに対し、最高裁判所は、「本件商標は、『つつみのおひなっこや』の文字を標準文字で横書きして成るものであり、各文字の大きさ及び書体が同一であるため、一体不可分である」という判断を示し、さらに、取引の実情を持ち出し「商標“つつみ”が登録されたときには、上告人の祖父と被上告人は、どちらも既に堤人形の製造を行っており、周りには“つつみ”が堤人形を表すものとしてよく知られていたのであるから、“つつみ”が被上告人だけに関係する商標とは言うことはできない。

 

また、『おひなっこや』は(東北人の一部にはわかるとしても)「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから造語であり、この部分も商標として考えるべきであるから、“つつみのおひなっこや”の中の『つつみ』だけを取り出して類否判断するような事情もない」と述べて、商標全体としてみた場合、両者は(称呼を含めて)類似していないと結論づけました。

3. まとめ

いかがでしょうか。このように、称呼の類似については主体によって判断がかなり異なります。実際に、弁理士から「審査では拒絶されますが、審判までいけば登録が認められる可能性がありますよ」と言われることもあるようです。審判は費用が高くなりますが、自分にとって重要な商標の場合は、弁理士に審判や訴訟での勝算を確認してみるのもいいかもしれません。

 

称呼の類似と判断される3つのパターン

前回「ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が母音を共通にするとき」について説明しました。今回は、比較する商標が 「ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が清音、濁音、半濁音 の差にすぎない」「相違する1音がともに弱音であるか、又は弱音の有無の差にすぎない」比較する商標の「相違する1音が長音の有無、促音の有無又は長音と促音、長音と弱音の差にすぎない」ときについて説明します。

相違する1音が清音、濁音、半濁音 の差にすぎない場合

比較する商標が「ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が清音、濁音、半濁音 の差にすぎない」ときは、称呼が類似すると判断されます。

 

「清音」「濁音」「半濁音」というのは「は」を例に挙げると、「は」が清音、「は」に「゛(濁点)」をつけた「ば」が濁音、「は」に「゜((半濁点))をつけた「ぱ」が半濁音となります。 例えばここに「サンシール」 と「サンジール」という商標があるとします。

 

これらの称呼を観察すると両者は共に5音からなる同数音の称呼を持つことがわかります。そしてその違いは第3音目の「シ」と「ジ」の違いのみです。さらに「シ」と「ジ」の違いは清音と濁音の違いのみです。

 

このように比較する商標の「音数が同じ」で「称呼の違いはそのうちの一音のみ」そして「違う音の差が清音や濁音によるものである」という、三つの要件を満たしている場合原則として両者の称呼は類似すると判断されます。

相違する1音がともに弱音であるか、又は弱音の有無の差にすぎない場合

次に比較する商標が「相違する1音がともに弱音であるか、又は弱音の有無の差にすぎない」ときは、称呼が類似すると判断されます。「弱音」というのは、声に出して読んだ時に弱く発音される音の事です。

 

例えばここに「ダンネル」 と「ダイネル」という商標があるとします。
これらの称呼を観察すると両者の違いは2音目の「ン」と「イ」の違いのということがわかります。この「ン」や「イ」は弱音ですから「ダンネル」と「ダイネル」は類似する称呼の商標となります。また「ヤマセ」と「ヤマセイ」という商標を比較した場合、これらの違いは「ヤマセ」の後に「イ」という弱音が在るかないかの違いのみです。

 

この「イ」は弱音ですから、「ヤマセ」と「ヤマセイ」は類似する称呼の商標となります。このように商標の差が「弱音のみ」または「弱音の有無」のみという場合、原則として両者の称呼は類似すると判断されます。

相違する1音が長音の有無、促音の有無又は長音と促音、
長音と弱音の差にすぎない場合

次に比較する商標の「相違する1音が長音の有無、促音の有無又は長音と促音、長音と弱音の差にすぎない」ときは、称呼が類似すると判断されます。

 

「長音」というのは音を伸ばす時に使われるもので、「デーダ」や「ジュース」等の「-」の部分をいいます。「促音」というのは音を詰まらせる時に使われるもので「マット」や「ステップ」等の「ッ」の部分をいいます。

 

例えばここに「レーマン」と「レマン」という商標があるとします。

これらの称呼を観察すると両者の違いは「レマン」の「レ」と「マ」の間に長音があるかないかの違いのみです。このように比較する商標の差が「長音の有無のみ」、「促音の有無のみ」等の場合、原則として両者の称呼は類似すると判断されます。

 

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