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「八丁味噌」のGI登録をめぐる地元での対立構造

「八丁味噌」のGI登録をめぐる地元での対立構造

2006年に出願受付が始まり、今では日本全国から出願が相次ぐ「地域団体商標制度」は、地元ブランドの権利を保護することで地域振興の一翼を担うという本来の目的がかなり浸透してきているようです。

 

一方、地域団体商標制度とは別の観点で地域ブランドの特性を活かそうという趣意で制定されたのが、2017年に開始された「地理的表示保護制度」(略称:GI)です。

 

ところが、愛知県の名産である「八丁味噌」のGI登録をめぐって地元では思わぬトラブルが持ち上がっています。「八丁味噌」のブランド価値をめぐる深刻な対立構造を考察してみましょう。

農林水産省が管轄するGI制度

GI制度は、その商品が産地と強い結びつきによって確立されていることを示す「地理的表示産品」であり、これを示す標章が「GIマーク」と呼称されます。つまり「GIマーク」は、「地理的表示法」(2014年6月制定)に基づいて保護される最も新しい知的財産なのです。

 

また「GIマーク」は、WTO(世界貿易機関)やWIPO(世界知的所有権機関)の協定により、各国の特産品に対する権益を保護すべきという国際的なコンセンサスを基軸として法制化されたという側面を持っています。

 

有名商品に対する名称の所有権は、各地域でたびたび係争の種となっていました。これを解決する目的で導入された「地域団体商標制度」は特許庁が管轄していますが、「GI制度」は農林水産省の管轄となっています。

「八丁味噌」をめぐる地元での深刻な対立

愛知県に古くから伝わる「八丁味噌」については、2017年12月に農水省が愛知県下全域の業者に対しGIの登録を認可しました。ところが、愛知県・岡崎の2業者がこれに異を唱え、今回の登録は無効にすべきとして、2018年3月に行政不服審査法に基づく審査を申し立てたことで、大きな混乱に発展しているのです。

 

異議を申し立てた2社は、地元岡崎市で江戸時代から続く老舗として知られる「株式会社まるや八丁味噌」と、「カクキュー」ブランドで名高い「合資会社八丁味噌」で、両社とも今回の「八丁味噌」のGI申請団体である「愛知県味噌溜醤油工業協同組合」には加盟していない業者だったことが騒動の遠因にあるようです。

 

両社は「われわれこそが八丁味噌の正統な製法である」と強い信念を有しており、両社が八丁味噌を製造する際に守っている「木樽で2年以上熟成させる」という絶対条件を他業者は継承していないと主張しています。

 

両社の言い分では、今回のGI認定によって、組合に加盟していない2社だけが商品に「GIマーク」のステッカーを貼付できないことになり、著しい不利益を被る結果となると主張しています。確かに「GIマーク」の付いた商品は、国がその商品に「お墨付き」を与えたのと同等の効果があり、消費者によっては「GIマーク」付の商品が「本物」と認識され、「GIマーク」のない商品は「模倣品扱い」される可能性も否定できません。

「現実的妥協」か「独自の道」か

この事態を憂慮した岡崎市議会は、「指導、調整を政府に強く要望する」との意見書を全会一致で可決し、農林省が主導して解決に向けて行動することを強く要請しています。

 

この問題に対し、農林省側は2社に対し「今回のGIの認定基準に同意し追加申請すれば『GIマーク』は使用できる」との判断を示しました。すなわち「今回、登録外となった2社が組合に加盟しないのならば、組合と同じ条件を受け入れてGI登録の申請をせよ」というのが農林省の見解のようです。

 

先祖代々受け継いできた「八丁味噌」の伝統を否定しかねない妥協案を、両社があえて呑むのか、それとも「GIマーク」という「錦の御旗」をあきらめて独自の道を進むのか、地域振興の目的で制定された「GI制度」が、皮肉にも地元企業に大きな亀裂を生じさせる事態にならないような解決策を望みたいものです。

 

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