パロディ商品
世の中には有名な商品をもとに遊び心で作られた、いわゆる「パロディ商品」が多く存在します。しかし、そのパロディ商品を巡って訴訟に至るケースは少なくありません。 北海道のお土産として広く知られている名菓「白い恋人」。
その「白い恋人」のパロディ商品として吉本興業が販売した「面白い恋人」が訴えられたというニュースは記憶に新しいと思います。両者の商品名やパッケージが似ている、ということで「白い恋人」の販売元の石屋製菓が「面白い恋人」の販売元である吉本興業を提訴しました。
(参考:毎日jp「面白い恋人」訴訟:石屋製菓側が1.2億円賠償請求
URL:http://mainichi.jp/select/news/20120126k0000m040054000c.html)
実際のところ、両者はどこまで似ているのでしょうか。
商品名、パッケージ、販売地域、中身の4点について比較してみましょう。
商品名について
商標の類比判断は、 称呼 (読み方・聞こえ方)、 外観 (見た目)、 観念 (意味)の3つを全体的に観察しておこなわれます。これをもとに両者を比較してみましょう。
称呼 : 部分的に似ているが、音数が異なる。
外観 : 部分的に似ているが、文字列全体を比較すると異なる。
観念 : 「白い」と「面白い」の意味は異なる。
上記をもとに全体的に観察してみると、両者は非類似なのではないでしょうか。
パッケージについて
商品を買う際に最も重要になるのがパッケージです。
白い恋人 | 白を基調としており、中央にハートマークの中に雪山がデザイン されている。「北海道名菓」の文字あり。 |
面白い恋人 | 白を基調としており、中央に楕円形の中に大阪城がデザイン されている。「大阪新名物」の文字あり。「白い恋人」よりも 箱のサイズが大きい。 |
実際に両者のパッケージを比較してみると、確かに「面白い恋人」は「白い恋人」に依拠して作られたデザインです。
しかし、全体的に比較すると全く違った商品です。依拠したデザインではありますが、違いは一目瞭然です。また、それぞれに地名が表記されているので、両者を混同するおそれはありません。
販売地域について
白い恋人 | 基本的に北海道にて販売。全国で開催される物産展にて出店・販売。東京でもアンテナショップや羽田空港内にて販売。 |
面白い恋人 | 大阪、京都、兵庫の3府県にて販売。 |
両者はパッケージに表記された地域で販売されています。販売地域が異なるため、消費者がそれぞれの商品を間違えて購入することは少ないでしょう。
中身について
商品購入の際に、パッケージの中を見ることはできません。しかし、最近では商品の中身がわかるようなサンプルを置いているお店が多くなっています。
白い恋人 | ホワイトチョコレートをサンドした、四角形のクッキー。 |
面白い恋人 | みたらし味のクリームをサンドした、丸型のゴーフレット。 「白い恋人」よりも大きい。 |
両者の中身を比較してみると、全く異なる商品です。なお、「面白い恋人」は一年かけて開発されました。
以上4点について比較してきましたが、総括してみると、石屋製菓が吉本興業に販売差し止めや損害賠償を要求するのは難しいのではないでしょうか。
確かに、「面白い恋人」は「白い恋人」に依拠して作られたものです。似ている部分もあります。しかし、商品名、パッケージ、販売地域、中身を全体的に比較してみると、消費者が両者を間違えて購入する可能性は低いと思われます。よって、「面白い恋人」はこれからも販売継続できるのではないかと私は思います。
しかし、日本にはまだまだ「白い恋人」のパロディ商品が存在するのです。
・東京『白いお台場』 | ・福岡『赤い恋人』 |
・大阪『大阪の恋人』 | ・名古屋『ドアラの恋人』 |
・京都『京都の恋人』 | ・奈良『奈良の恋人』 など |
(参考:NAVER実は他にもこんなに有った!噂の「白い恋人」のパロディ商品大集合
URL:http://matome.naver.jp/odai/2132292071101236901)
「面白い恋人」が摘発された今、これらのパロディ商品が石屋製菓によって摘発されてしまう日もそう遠くはないでしょう。 商標法や不正競争防止法といった法律がありますが、パロディ商品について規定された法律はありません。これを機に、パロディ商品についての見直しを行うのもよいかもしれません。 しかし、パロディ商品はあくまでも“遊び心”であるということを、忘れないでほしいものです。
文責 みなとみらい特許事務所
弁理士 辻田 朋子
渡辺 彩夏
参考文献:
1.毎日jp 面白い恋人訴訟:吉本興業側、請求棄却を求める
http://mainichi.jp/select/news/20120412k0000m040106000c.html
2.サンケイビズ パロディ商品、どこまで笑える?「白い恋人」vs「面白い恋人」 審理の行方
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/120212/cpb1202121201000-n1.htm